●私鉄高退協便り
東北地連高退協 第35回総会

新会長に吾妻紀夫さん(福島交通)  二上宗一さん(宮城交通)が事務局長に

新総会終了後
 「脱原発」で学習会も開催


新役員が挨拶 (相馬市岩の子「清風荘」での東北地連高退協総会)


 
  10月23日、東北地連高退協が相馬市岩の子で、50人が参加して35回目の総会を開いた。会長が80歳定年により、茂木徹さん(宮城交通)から吾妻紀夫さん(福島交通)に交代、事務局長に二上宗一さんが就いた。
 茂木会長は冒頭挨拶で、森屋たかしを擁立したたたかった参院選にふれ、「東北地連は登録人員の約2倍となる得票だったが、全体ではいま少しだった」と、地域の健闘と悔しさを語った。
 来賓挨拶では小池泰博地連委員長が、これからの課題は「安全・安心・安定がキーワード」と述べ、安倍内閣の暴走を許さない、と決意を述べた。
 東北地連高退協の新方針では、「私たちを取り巻く情勢」に詳しい記述がある。以下のカコミの部分は、その一部だが、参考になる。

 私たちを取り巻く情勢

1.世界中で「分断」と「ポピュリズム」(編注:大衆主義や人民主義、大衆の一面的な欲望に迎合して大衆を操作する方法を指し、大衆迎合主義とも訳される)の政治が進行しています。
 アメリカ大統領選挙をめぐるトランプ旋風、イギリスのEU離脱決定、ヨーロッパ各国の難民に対する排外主義と民族主義、ポピュリズム、ISをはじめとする既存体制への反発と過激な暴力主義勢力の台頭などです。
 その背景にはグローバル化と新自由主義に基づく規制撤廃、競争激化による失業者の増大、貧富の差の拡大があります。また、多数決主義により少数派の正しい意見や要求が無視され続けたことへの絶望と反発も過激な暴力主義や排外主義を生み出している要因と考えられます。このような状況を見るにつけ、議会での「多数決主義」を貫きとおそうとする安倍自民党政権に強い警鐘を鳴らし続ける必要があります。

2.「国民主権」「基本的人権の尊重」「戦争放棄」が日本国憲法の三大特徴であることは言うまでもないことです。(中略)
 戦後70年、他国の国民を殺さず、殺されなかったのは自民党といえどもこの憲法を守り、「専守防衛」を基本とした平和主義に基づく政治を行ってきたからではないでしょうか。

3.その自民党はいま、「戦後レジームの転換」をめざす安倍政権のもとで、自民党憲法改正草案に沿う方向で現憲法を形骸化させ、積極的平和主義の名のもとに首相補佐官が「法的安定性は関係ない」とまで述べ「憲法解釈を捻じ曲げ」て、集団的自衛権の行使を容認する道を選びました。
 たしかに、北朝鮮の相次ぐ原爆実験や潜水艦発射弾道ミサイル発射などによる挑発的姿勢や、尖閣諸島周辺への大漁船団を送る中国の行動など、日本をめぐる情勢は異なっています。
 そのような情勢変化をとらえ、改憲派は「我が国を取り巻く情勢は緊迫度を増している。日本を敵対視する国家の信義に期待するのか」と声を高め、安倍自公政権はこのような声を背景に「自衛強化」と称して軍備増強を進めています。
 殴られそうだから殴る用意をするより、殴られないよう毅然たる態度を示し続ける、「耐える勇気」と「専守防衛に徹する」平和国家日本の姿を世界にアピールする姿勢こそ重要だと考えます。

4.いま、年金・医療・介護などの社会保障制度が揺らいでいます。その最大の要因は「少子・高齢化による財源不足にある」と政府は言います。しかし、その背景には雇用と労働法制の改悪、規制緩和による低賃金労働者の増加、加えて不安定雇用者が社会保険にも加入できない現状があります。
 このことが、社会保障財源に限らず中央・地方の税収をも逼迫させる負のスパイラルとなっています。少子高齢化の加速や、高齢者の生活をも左右する要因となっており、みんなで支え合う社会保障制度の充実こそが日本社会の発展にとって最も重要であることを強調したいと考えます。

5.東日本大震災から5年半経過しました。インフラ部分はほぼ復興したとはいえ震災からの復興は道半ばです。現在も避難者はおよそ14万7千人、内、原発被害を受けた福島県はおよそ8万7千人が避難中であり、県外には4万人強の人が避難したままとなっています。
 福島、宮城、岩手3県の復興公営住宅は51%しか完成せず、民間住宅に至っては土地造成やかさ上げが未だ34%程度の完了にとどまっており、結果として地域全体の復興の遅れにつながっています。
「復興」の定義はどうなのかわかりませんが、避難者がいなくなった時を「復興完了」と考えるなら、まだ道遠しと言わざるを得ない状況にあります。それでいて、平成32年までの復興予算32兆円の内、25.5兆円が「執行済み」という事はどういう事なのか合点がいきません。
 一方、原発事故による汚染水の処理すらまだ目途が立たず、廃炉に向けた行程は2040年〜50年というものであり、これすらも「希望的」でしかありません。
 後遺症はいつ癒えるかわからないほど深刻なものです。しかも、炉心溶融という事実を隠し続けた東京電力の「隠ぺい体質」とセキュリティに対する危機意識の欠落や日本原子力開発機構による高速増殖炉「もんじゅ」のずさんな管理運営体制などからみて、これらの組織を信用しえない状況にあることです。事故の教訓とともに、原発を管理運営しているこれら組織の信頼性欠如の現状を考えれば、将来のエネルギー政策は「脱原発」を選択することこそ正しい道であるはずです。
 このことを国民に強く訴え、脱原発への啓もう行動を現役の組織とともに進めていく必要があります。

6.以上のような情勢認識の上にたち、戦争の恐ろしさを体験した世代として、平和の尊さを若い世代に語り継ぎ、私鉄総連高退協の指導もあおぎながら社会保障制度を改悪させないため、政策制度要求の実現に向け、積極的で粘り強い運動を展開することとします。

 
 2016年の取り組みについては、
1.大震災と原発事故を風化させず、自立・自助の精神で復興を目指す
2.脱原発に向けて
3.国民的課題と制度政策の課題
 などを掲げ、190万円に迫る予算とともに、満場拍手のなかで決定した。

 総会終了後、全林野退職者の会会長・伊東功さんの報告による「脱原発」の学習会が、約1時間を超えて行われた。1950年生まれの伊東さんは、2010年福島県職を退職、退職者会の会長を務める。「原発事故川柳400」を顕したあと、2014年に「原発事故の川柳274 昭和歌謡編 脱原発『福島からの風』」、2016年には「原発事故の川柳235 放浪編 脱原発『福島からの風』」の2冊を自費出版(写真)して脱原発運動をアピールしている。

  この総会には、私鉄高退協顧問となった井田隆重さんも参加した。同顧問は、高退協総会で配布した『社会保障読本』を提供、国会での年金論議をふまえ「現在受けている年金を、これ以上切り下げないという<名目下限>は、年金受給者が絶対に守らせたい要求だ」と強調した。
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